映画ドラマ書き殴り健忘録

主にNetflixで見たやつの感想 ネタバレの宝庫です

映画『ヤクザと家族 the family』〜任侠モノじゃなくてこれは多様性についての問題提起映画だよ〜

 

見たよ〜 ヤクザと家族

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任侠モノ見たことないからドギマギして見たんだけどこれはタイトルにも書いた通り任侠モノじゃないね😇バーンバーンバキャーン!テメェ落とし前つけてやるゥ!っての想像してたけど全然違った これはヤクザを通して社会問題を取り扱った人間について考える映画でした

 

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だって藤井監督だもんね バリバリの社会派映画監督じゃんね 新聞記者撮った人が次に撮る作品がオラオラ映画なわけないよな

 

とりあえずの感想はね、見てよかった!!

けど終わったあと1回目はまだ明るい気持ちになれなくて一日中引きずって、いやもう一回みてみよ。。ってじっくり見たらようやく意図することが伝わってくるズドーン系映画だよ 気合いと時間とってみた方が絶対いいよ

ただ、舘ひろし綾野剛北村有起哉(中村役の人ね、ゆきやって読むんだって)、磯村勇斗、このメインキャストが良すぎるから演技だけでも見てってほしい。

特に北村さんと磯村くんは脱帽レベル。。舘ひろし綾野剛はなんか言われんでもヤクザできそうなのわかるけど。

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はい あらすじ

ヤクザという生き方を選んだ男の3つの時代にわたるヒューマンドラマ。自暴自棄になっていた少年期に地元の親分から手を差し伸べられ、父子の契りを結んだ山本賢治(綾野)。ヤクザの世界でのし上がる彼は、やがて愛する自分の「家族」とも出会う。ところが、暴力団対策法の施行はヤクザのあり方を一変させ、因縁の敵との戦いの中、生き方を貫いていくことは一方でかけがえのないものを失うことになっていく……。

 

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この映画、繰り返しになるけどほんとに任侠モノ、ただのヤクザモノではない。なので、そのつもりで見てしまうと多分、いやかなり物足りないと思う。あくまでもヤクザを通して、時代や社会に押しやられ押し潰されてしまうようなひとたちに目を向け、個々の胸中に根付いている偏見に今一度目を向けさせるために作られてる、映画なんじゃないかな。

だから、義理と人情の深さや厚さでいうとあまり劇中では丁寧に描かれていない。

 

こっからネタバレね。

 

たとえば、綾野剛演じる賢二が組に入る最初のシーン。

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賢二は元々はただの地元のヤンキー。母は幼い頃に死んで、たった一人の身寄りだった証券マンの父親もバブル崩壊後に失業して覚醒剤に手を出してしまい死亡。その葬式のシーンから物語は始まる。

その後荒れに荒れた賢二がヤクザがかかわっていた薬物の売人に喧嘩を売って薬物を捨てたことで命を狙われて、それを助けた舘ひろし演じる柴咲の人柄に魅了され、というかその姿に父親を見て、組に入ることを決める。

なんだけど、生い立ちも複雑でここまで荒れに荒れたヤンキーが心を入れ替えて組に入るにはちょっとエピソードとしては短い。

手を抜いたのではなく、あまり必要なかったからとしか思えないし、逆に言えば作り物の家族像をここに表しているためかとも感じた。

なんというか組に入るきっかけがあっけない感じする。まあ血塗れなんだけどね。

 

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父子の盃を交わすシーンは、後に賢二が出所する祝いの席と対比してて、出所時には時代の波に揉まれて6人に減った組員とお酒を交わすんだけどあまりの寂しさにウオォとなったよ。。胸が痛い。。

 

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あとヤクザになる前の賢二は金髪なんだよね。

これは組に入る覚悟を表してるのかなと思ったけど、ヤクザ=裏仕事もこなす影役者にならなければならないという意味も込められているんじゃないかって考察読んで、ギャースってなった。

 

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初っ端からマジイヤーな役してたこの刑事さんも本当に腹立つくらいイヤな役してくれてたな。柴崎組と対抗する侠葉組からお金もらって侠葉組には手出さんくせに柴崎組に都合の悪いようにしやがってコイツ。

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ほんでこの人もな、こいつが喧嘩ふっかけてきたけん柴崎組vs侠葉組の戦い始まって大原殺されたんじゃ。結局🐘さん丸出しで死んだけど。

 

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あと、怪我した賢二の手当をしたキャバ嬢の女の子、いやまさか?ってしばらくじっと見てたけどおのまちこなのかよ!!!たしかに2019年まで舞台続くけどおのまちこ19歳くらいの役したってことヤバすぎ。さすがに無理あるくない。。???

ほんで、このシーンだけで賢二は由香のこと好きになっちゃうっていう感情、ここでも情の動きの適当な描き方よ。わざとか???わざとだったら賢二ちょっと優しくされただけで人のこと好きになっちゃうじゃん。。。今まで一体どんな扱い受けてきたんよ。。。

 

 

とまあ、ひとつ目の時代はバブル崩壊後、賢二の父親みたく色んなものを失った人が多くいた時代。裏社会も当たり前だった。ふたつめの時代が、2005年の暴対法成立前のヤクザの全盛期。ほんでおそらく一番描きたかったんだろうなってのが最後の時代、暴対法によって、社会の人々の価値観の変化によってヤクザが社会の除け者にされてしまう時代。

 

この2つ目の時代にケジメをつけるべく、組を仲間を守るべく殺人をして刑務所に入った賢二が、3つ目の時代へとかなりのブランクとギャップを背負い込み出所するという物語。

暴対法によって、ヤクザは口座も持てない、店も立退、ヤクザから足を洗ったとしても5年は人間としてまともに就職したり扱ったりしてもらえないという5年ルールが賢二の足を引っ張る。その上、久しぶりに会った仲間にも一緒にいたら反社だと思われると拒絶されるわ、柴崎組は密漁や覚醒剤の売買をしないとやっていけない弱小ヤクザになってるわ、強くてかっこよかった親父は癌になってヨボヨボ。これは目を当てられないくらいしんどい。

唯一、賢二が希望を見出せたのが、実は由香との間にできていたという子供と、昔から賢二を尊敬していて賢二のかわりにと街の顔役になるなどしてくれた上に賢二の出所をめちゃくちゃ喜んでくれた翼の存在。

他でもないこの翼、が磯村くん。

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法的にも社会的にも厳しいこの時代でずるく賢くスマートに生きる、新時代の裏社会の顔って感じだった。

 

でも何より本当の家族がいたということは、借り物の家族だった組を抜けてでも守り抜きたいほど、賢二にとっては嬉しい出来事だったんだろうね。

寂しい男。。。いやほんとに最後まで不器用で寂しい男なんだよ賢二。

 

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幸せは一瞬。結局、時代の流れには逆らえず、職も家族も失う羽目になってしまった。

そんな賢二が最後にすること、それが翼の代わりに、翼に汚れ仕事をさせないために、翼の仇を取るという。。。

 

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最後の最後に、ヤクザが秘密裏に行っていた裏仕事をやってのける。組は抜けたけど賢二は最後までカタギには戻れなかった。自分にできることをやる。

これは義理と人情って言葉にカテゴライズされるのではなく、ヤクザとしての仕事を全うしたのだという、役目を果たしたという感覚の方が近い気がした。

 

昔あたりまえにヤクザがいた時代は、秘密裏に、表に出せない汚れ仕事をヤクザはしていた。

義理と人情で人のため仲間のため生きるヤクザだった柴崎組が追いやられ、時代の先を見たセコくて最低な侠葉組がうまくのしあがる結果となってしまった暴対法。

なんだかな〜って感じです。

 

 

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言わずもがな、最後の名シーンはほんとに良かったよね。

賢二が死んだ場所にお花を添えにきた翼と賢二の子供が出会って、「お父さんってどんな人だったの」と聞かれた翼が全てを悟り、「ちょっとはなそっか」と微笑むシーン。

この、全てを悟り、の部分!!!!

磯村くんが全てをもっていきましたーーー

脱帽

 

借り物の家族である翼と、本物の家族である子供。この二人を未来に残した賢二。

ほんで、翼の名前が翼なところがもうね。ハーーー羽ばたいてくれ。。。

 

 

ヤクザとか、反社とかって聴くと、すごい怖くて近寄り難くて、かかわってたらやばいって印象しかなかったけど、この映画を見たら、その見方が変わってくるよね。

もちろんまだ、怖いし、関わるとかはないしヤクザを擁護するとかでは全くないけど、

もう繰り返し言っているけどヤクザを通して社会に追いやられた人々のことを見ている映画なので。

固定概念や偏見で、知らず知らずのうちに追いやってしまった人やモノが自分にもありそうな気がする。

まっさらな気持ち、目で世の中を見て自分で判断していかないとダメだなと思いました。

多様性を受け入れる、そんな世の中にかわりつつあるけど、

逆に、受け入れられない人を拒んだりしてない?

なんて思ったりしてな。。。。

 

どう思うかはほんとに個人の自由。

それが各々受け止めて咀嚼できる世の中、人間になりたいなあ。。

みつを

 

自分たちはもういいから、次生きる子供たちが生きやすい世の中になってくれ。

なりますように。

いや、していかんといけんのか。

 

 

などなど考えさせられる映画だったな〜

おわり