映画ドラマ書き殴り健忘録

主にNetflixで見たやつの感想 ネタバレの宝庫です

映画『朝が来る』〜なかったことにしないで〜

見たーーーー朝が来る

公開当時から気になってたけど予告とかパンフレットとかバンバンにミステリー映画を匂わせていましたがね、これはミステリーなのか??!!ドキュメンタリー映画かと。。。

泣ける映画です 私は2度違った意味で泣いた

前半に感動的な意味で泣いて、後半に心が痛くて涙が出た 

あらすじにもある通り、生みの親が「子供を返して」と言いに来るところから始まるんだけど、映画の前半と後半でそのシーンに対する気持ちが全然変わってしまう。こんな映画があるのか、前半に抱いた感情すら自分の視野の狭さを恥ずかしく思えてしまうような怒涛の描写が続く、胸を抉ってくる

 

終わりに救いがあってよかったっていう感想あったけど、あんなもんじゃ救いも何も。。。って思ったの私だけか????

 

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はい、あらすじ

長い不妊治療のすえ、特別養子縁組を選択した栗原清和(井浦新)と佐都子(永作博美)夫婦と、中学生で妊娠し、やむを得ず子どもを手放した幼い母親、片倉ひかり(蒔田彩珠)の物語。 2人の女性の人生の選択と葛藤を通して、母親になるということはどうゆうことなのか考えさせられる作品。

 

ここから怒涛のネタバレ祭りだよ

 

まず物語の構成として、さっきも書いた通り前半と後半に分かれて2つの話が描かれてる。

前半は、朝斗を養子として迎えた井浦新永作博美夫婦の物語。朝斗が通う幼稚園で起こった子供同士のトラブルから始まる。

そこでの佐都子は、本当に自分の子供が嘘をついていないのか、悪いことをしていないのか、ちゃんと信じてあげられない。相手の母親はなかなかに嫌なやつなんだけど自分の子供を全力で信じてんの。結局悪いのは朝斗じゃなかったとわかってホッとするっていう流れなんだけど、ここでの佐都子は頼りなくてどこか本当の親じゃないことに後ろめたさ、負い目を感じているようにも見える。

そこから、朝斗を引き取ることになるまでの回想スタート。

 

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清和と佐都子の元には子どもがやってこなかった。不妊の原因は清和にあって、わざわざ北海道まで仕事を休んで治療に行く日々。努力をしても実らない、お金と労力と精神だけがすり減っていく。自分に原因があることにどんどん傷ついていく夫の姿、男としてのプライドを隠そうとするんだけどどうしてもちらりと顔を覗かせてしまうあの演技、井浦新うまかったなあ。。。

 

ある時、大雪で飛行機が欠航し、空港で佐都子は「もうやめよう」と「2人で生きていこう」と清和に告げる。苦しみの中で背中を縮こめていた清和は、本当はもうずっとやめたかったんだと号泣し、2人は一度子どもを諦めた。この辺も見てて苦しくなった人は沢山居ると思う。

 

2人での生活を楽しみながらも、どこか影のある描写がずっと続く。この仄暗さで2人の感情を表現しているのよかったよね、こっからどんどん明るくなるからね画面。

そんで、ある日旅先でたまたま目にした養子縁組の番組。この番組を食い入るように見つめる2人は、養子を迎えると言う選択をする。

 

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後日聞きに行った説明会。市役所でするあたりがリアルガチっぽすぎ。

そんでさ、見て、カーテンの向こうの明るさよ。カーテンが開いて、日が差し込んでいる描写。2人の閉ざされてしまった未来に日が差してるってわけ。良すぎでしょ。

養子を迎えることを決めて久しぶりに見せる清和の明るい笑顔に、私もここまではあーよかったね、そういう選択がしやすい世の中はいいことだよねえ、と思ってた。

 

ここから一気に場面が変わり、産まれた赤ちゃんに会いに広島に向かう。

個人的にはこの、養子を決めてから迎えるまでの映像が全くなかったこと、つまり一瞬で切り替わる展開にグゥッてなった。だってそうだよね、妊娠の期間も出産の過程も彼らにはないんだもんね。。

あと、赤ちゃん産む施設広島の離れ孤島なんだけど、これわざわざ何もない島で隠れるように子どもを産むって言うことなんだよね。

 

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生まれて入院期間が過ぎた赤ちゃんを受け取る2人に差し込む朝日。朝が来たって意味かよ〜〜タイトル〜!!!

 

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そんで赤ちゃんを受け取る瞬間に初めて産みの親に出会う。ぎゅっと握られる手、深々と下げられる頭に、このときに見たこの行動は後半を終えた後で見ると全然重みが違う。

 

ここから晴れて家族3人の新しい生活が始まるってわけ。幸せでいっぱいの。

 

ここで回想が終わり現在にもどる。

朝斗の友達、ママ友との問題が解決して平和が戻ってきた穏やかな日々に一本の電話が鳴り響く。子どもを返して欲しい、そう電話先で話すのは朝斗を産んだと言う産みの母親を名乗る女。

ここから、後半の話、産みの親、ひかりサイドの物語が始まる。

 

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ひかりは父、母、姉と暮らす中学生。どこにでもある家庭にも見えるが、レベルの高い高校に進学する優秀な姉とどことなく対比した存在のようにも見えるひかり。特別な何か問題があるわけではないようだけど、両親からの愛に溢れた家庭という雰囲気ではない。

そんなひかりが恋をする。はじめての恋。幼い中学生同士が心地よい居場所と信じ、世界がまるで2人だけのものだと思い込み、ずっと一緒にいようねという約束の真似事をする。セックスもひかりにとっては好奇心の行く先ではなくて、純粋な愛と恋で塗りたくった居場所のよう。

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キラキラしてたね。してたんだね、脆い。。

 

初経がまだきてなかったひかり。だから妊娠に気がついたのも中絶できる週を過ぎてからのことだった。

泣き崩れる母親の言葉、「この子まだ中学生なんですよ、どうすればいいの先生」にお医者さんが「だから私たち大人がしっかりしないと」と諭すんだけどひかりにはもう言葉は届かない。

お母さんあなたが泣いてちゃひかりは泣けないよ〜。。。

ひかりは産んで育てたいと主張するが、中学生の幼い言葉を大人は聞き入れてくれない。彼氏はごめんと逃げ出してしまう。泣いて崩れ落ちるひかりの「ずっと一緒って言ったやん」。。。辛かった。なんで妊娠したら女の子の方で考えなきゃいかんの。なんでそうなるの。

結局親たちが一方的に養子縁組に出すことを決める。でも現実的にも心も身体も幼いひかりに育てていく経済力も知識も、そしてかなしいことに支援もない。親にその力がない。。

養子に出すしか選択できなかった。

 

出産に向けて広島の施設でその日を待つひかり。そこでの同じ境遇の女の子たちとの出会いは傷ついたひかりを癒してくれた。

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少し、ひかりは依存体質なとこがある。でも幼くして妊娠してしまう、女の子たちにはよくある気質な気もした。

 

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無事出産するんだけど、もうすぐに赤ちゃんと別れなきゃいけない。名前をつけるのは養子を受け入れる側の親たち。ひかりはお腹にいる頃から赤ちゃんに対してよく声をかけていた。ベビたん。そんなふうに声をかけお腹を撫でるひかりの声は慈愛に満ちていたし母そのものだった。

よく幼くして子供を身篭り産む人たちのことを、子供が子供を産んで、とか言う人いるけど、もうほんとにそういうの言わないで。子供をお腹で育てること、産むことがどれほど大変なことか、わかっている人もいるのに。その過程がわずかでもその女性を母親にしてくれると、その子が何歳だとしても思わずにはいられないよ。

 

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この後佐都子たちにベビたんを渡す。その手、震える手、覚悟を決めてお願いしますというだけではない。どうして、なんで、私でも育てられる、離さないで、ひかりの悲しみが波のように押し寄せて私たちを襲う。

 

そんなひかりを連れて帰って、元の生活に無理やり戻そうとする母親たち。無理だよそんなのもっと心のケアしてあげてよ。。。

案の定やっぱりひかりの心は前には進めない。家を飛び出して1人、生きることを決める。

 

そこで妊娠中に過ごした施設に行って、雇ってくれないかと頼むんだけど、もうベビーバトンは終わりにするのだと聞かされる。

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ベビーバトン、養子縁組斡旋団体の代表の人、あっけなく施設が閉鎖されてしまうのだけれど、その背景は描かれない。

養子縁組斡旋団体にも色々な問題がつきまとうことはよく知られている。ついこの間も、海外へ養子を斡旋していた団体の不正行為が発覚してニュースになっていた。

人身売買につながるのではないかという境目。

そうでない団体が多いこともよくわかっているのだけど、色々な難しさの上で成り立ってる仕組みであることが垣間見える。

 

そんで、ひかりの助けはしてあげられないと別れてしまう。そう、養子縁組斡旋団体はそもそもひかりのような育てられない親を救う目的なのではなく、そんな中で生まれてしまった罪のない子どもたちを救うために存在しているから。

 

その後、ひかりは新聞配達の仕事を得て頑張って働くんだけど、そこで出会う同じ境遇の女の子と意気投合するもやはり彼女は悪い運ばかりを引き寄せてしまう。

仲良くなった彼女は借金の保証人をひかりにして逃げた。ひかりはその子を責めたり追うことも、周りに助けを求めることもなくなんとかしようともがく。愛に飢えているひかりは、手放せないし突き放さない。。

 

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でも本当は気にかけてくれる人もいて、そこの店長さんなんかいつも声かけてお菓子くれて、ひかりのことを気にしてくれている。

でもひかりはうまく助けを求めることもできないんだよね。。。助けが必要な子に多いなあ。。

 

結局お金に困ったひかりが電話をするのが佐都子のところ。子供を返してほしい。それができなければお金を渡せ。そう脅す。

 

ここでの佐都子たちは超強気。最初の朝斗の友達問題で揉めたときの自信のない母親じゃない。朝斗は渡さないと決して譲らない。

さらには、金髪でぼろぼろで、変わり果てた姿のひかりを、あなたはひかりさんじゃない、彼女はそんなことを言うような人じゃないと突き放す。

 

なんて言葉なんだろう。でも、子どもを守るためにはこうなるか、とも。

言われた方のひかりは何も言葉が出ない。涙しか出ない。私は今、何者なんだろう。私には何もない、奪われてばかり、そんな悲しい想いが小さく丸まった背中から、少し汚れた肌から、握りしめた手のひらから伝わってくる。辛い、

 

ラストは、訪れてきた女性が本当にひかりだったことに気づいた佐都子が我に帰ってひかりを探し出すというところで終わる。

 

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養子を育てる母として、もう1人の母の存在を受け入れ、背負おうと決めた瞬間に思えた。

 

 

あーーー なんか一気にストーリーに沿ってしまったけど この映画から考えることが大き過ぎてまとめきれない。

今まで思っていた養子縁組への捉え。多様な家族があることは特に気にならない、むしろ良いことだと思っていた。それはその仕組みを経て幸せに育つ子どもがいる、子を産めない夫婦に希望をもたらすという認識だった。

確かにそれは事実だし、そういう思いはまだある。けれど、その奥にいる、産みの親の背景をひとつとて慮ったりしただろうか。

その顔も名前も秘密裏に隠れてしまう女性が、その制度そのものを喜びその後も幸せに暮らしているだろうと、なんで思ってしまうのか。

若いのに妊娠するからだ、自業自得だという声が聞こえるのではないのか。

 

養子縁組斡旋団体も確かに救われなかった命を救う。けど、ひかりのような子どもを誰か1人くらい支えてはくれなかったのか。彼女は救われないのか。どうして父親側は何もなかったことにして生活していけるのか。居た堪れない思いで胸が苦しくなる。

 

子どもを産んだ身として思うのは、あの痛み、あの壮絶な体験を乗り越えた先に、何もないなんて耐え難い。子どもを育てるのは大変なことだけど、奪わないでと心底思うだろう。

自分で育てたいと言ったひかりの思いをどうして軽々しいといえるのか。

何もなかったことにしないで、ひかりが最後に残して、そして消しゴムで消したその一言が胸を抉る。

 

もやもやするばかりで全然答えは出ないけど、自分が見えてる世界が全てではないことは肝にめいじなきゃと思った。

 

テーマが重すぎてなかなか感想を書くまでに至らなかったこの映画。

受けとったものも相当重い。

でもこういう問題を一人ひとりが認識していくことで変わる世界や人生があるのかもしれない。

なんて思ったりした。

 

なので見ておいてほしい一作。

色々な世代に、知って欲しいなと思う。

 

はい、終わり!!今回も!!唐突に!!終わるよ!!!!

終わり方教えて!!!!だれか!!!!